もはや余計な説明は必要としないスーパースピードバイク、隼。
新型の登場やKAWASAKIとの市販車最速の座を巡り熱いバトルを繰り広げておりますが、
普通の人間にとっては、どの道使い切れないであろう途方も無いスーパースペック車両。

そんな、ブサ(笑)をベースに全体をセンス良くカスタムしてある車両が今回の依頼車です。
ウチに入って来る車両はどれも例外無く、オーナーさんのこだわりを感じますが、
この隼も例に漏れず、深い想いがヒシヒシと伝わってきます。

そんな車両を任せて頂ける事は嬉しくもあり、プロとしては緊張感が常につきまといます。
2007年最後の仕事として倒れてでも年内に納品しなくては。。。。生きる事は戦いである(笑)
【HAYABUSA】
ベルリンガー/アグラス/マジカルレーシング/Nプロジェクト/デビル管/A-TECH等、ハイクオリティーパーツが
てんこ盛り!新車で購入して何年も掛けてここまでカスタムしてきた訳です。その想いあなたなら理解できるでしょ?
カスタム費用でもう一台位買えるのでは!?
当初はオーナーさんがご持参した、デザインラフ案での塗り分けペイントの予定でしたが、急遽基本お任せの
カスタムペイントプランに変更、大まかなご希望とご予算の提示で後は僕のセンスに賭けて頂きました。
まずは作業対象パーツの取り外しです。
今回の様に隣接パーツをデザインが跨ぐ場合には、車両預かりでの作業が必要となります。
取り外し完了!
あまりの部品点数に思わず記念撮影。この部品の実に9割以上が今回の作業対象パーツです(驚)
ちょっとした自動車位のボリュームです。
左上にチョコンとガソリンタンクが写っていますが、隼のタンクは決してチョコンとした大きさじゃないですよね!
それぞれのパーツにあった下地作業を進めていきます。
僕等の仕事は全く同じ条件の仕事は二度と無いと言っても過言では有りません。
毎回毎回、その品の状態とオーダー内容によってのオートクチュールと言う事です。
それぞれに必要な下地処理を施したら、下地塗装を施し乾燥室で熱乾燥。
塗装作業において、この乾燥工程はとても重要です。作業性/品質にも大きく影響してくるんですよ。
下地塗装が十分に乾燥したら、続いて研磨作業へ。
塗装屋の仕事は塗って研いでの繰り返し、この先の人生で僕はあと何百何千とこの作業を繰り返す事でしょう。
ホント地味ぃ~な仕事なんですよ、塗装屋は。
今回の様なオーダー内容ですと、通常の単色ペイントとは比較にならない時間とエネルギーが必要となります。
一つ一つ、繊細で正確な仕事が要求される上に、万が一失敗した時にやり直すには、
数倍の手間の掛かるリカバリーが求めらるのですから。。。
今回はオカズとして、この車両のコンセプト名をフリーハンドの筆書きで入れる予定。
しかし、久しぶりに筆を持つので、まずは指先と筆の感触を確かめながら慣らしをしております。
最近のウチの仕事内容ですと、筆を持つのは稀ですね。
ちなみに書いているボードはペイント色の確認の為に、作成したサンプル板です。
全てのペイント作業が終了し、最後の乾燥工程に入ります。
部品数が多いので3回に分けての工程です。
乾燥工程が終了したら続いて仕上げの磨きに入ります。部品点数が多いのでこれまた重労働です。
今回の様にデザインワークを施すと色と色の境界線に段差ができます、もちろんこの段を完全に消し去る事も可能ですが、
今回のオーナーさんはその部分はこだわらないと仰るので最後に全体をクリアーコートした仕上げとなっております。

当方では、お客様のご予算やご希望に可能な限り対応し、オーナーさん一人一人に合った仕上がりをご提供いたします。
残す作業は組み付けです。ここでミスってガリッなんて事になったら、間違い無く数十時間分遡って仕事を
やり直さなければなりませんから、集中力を限界まで高めて作業に取り組みます。
ちなみに、この時は12/31の大晦日、しかも前日から徹夜で仕上げているので神経の消耗具合は半端では有りません。
僕にとって仕事とは自分を磨く修行みたいなモノです(苦笑)
スイングアームの上に乗せている四角い黒い物はフェンダーの取り付けをカサ上げする為に付けたモノ。
なんでかって?通常使用では問題無いタイヤとフェンダーとのクリアランスも、時速300キロの世界だと遠心力でタイヤが縦に
膨張してフェンダーを粉々に破壊する事もあるんだそうです。僕は未体験だけどさぞ凄い世界なんでしょうね、300の世界は。
ちなみに僕は200で自己リミッターが作動してしまいます(笑)
長~い道のりを経て、無事完成!!
2007年最後の力を振り絞って仕上げた作品いかがでしょうか?
キャンディーバイオレットと発色の良いレモンイエローをベースに、フレーク/グラデーション/エアブラシ/フリーハンド等
ここでは到底書ききれない程の仕事が施されています。
コンセプト名のSPEED BLADE(高速剣)は、この車両のスピード特性とSUZUKIの名車、
カタナからインスピレーションを受けて、デザインから練り上げたオリジナルです。
通常ではペイントの対象ではない、カーボンパーツやウィンカー/テールライト/シールド等にもギミックを多用しています。

ギリギリ年内納品のお約束(大晦日になってしまいましたが)に何とか間に合い、2007年を無事に終える事ができました。
オーナーさんにも気に入って頂け、僕自身は真っ白に燃え尽きた年末でした(疲)